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ベトナムを中心とするアセアン(ASEAN)諸国に関する情報ページ。あと、時々書評とか。

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【書評】ドイモイの誕生―ベトナムにおける改革路線の形成過程 (シリーズ 民族を問う)

ドイモイの誕生―ベトナムにおける改革路線の形成過程 (シリーズ 民族を問う)
古田 元夫
4250209105


「ドイモイ」政策の開始はベトナムにとって大きな転換点となりました。社会主義国体制から「ドイモイ政策」への転換・開始とWTOへの加盟の2点によって、日本を含め外国資本がベトナム進出へ向かった大きな背景要因になっています。

本書はこの「ドイモイ」について、如何に政策決定がベトナム国内でなされていったのか、文献資料を中心に説明解説しています。

読後、なぜベトナムではレーニン像が倒されず、まだそびえ立っているのか少しわかりました。

目次:
序章
第1章:地方の実験
第2章:チュオン・チンの改革派への転身
第3章:価格ー賃金ー通貨改革の実施と挫折
第4章:発想の刷新をめぐって
第5章:政治報告書の書き換え
終 章:ズオン・フー・ヒエップ氏のドイモイ論によせて


本書の著者 古田元夫氏は東京大学教授であり、研究者です。氏の他の著作を読んだことはありませんが、「ドイモイ」の形成過程を研究される数少ない研究者のようです。

ところで、目次を開いて自分自身にがっくりしました。読む前の自分自身の知識・情報量では本書が何を展開しようとしているのか全く検討がつかなかったのです。「ドイモイ」という言葉は頻繁に耳にしていますが、目次を見た瞬間に「よく、ここまで知らなかったな」と思い知らされました。

1.序章に本書のエッセンスがまとまっています。
「ドイモイ」について全く知らなかった私ですが、序章を読み進めることで、本書を読むために必要な背景情報を得ることができました。序章には、1945年以降から1970年代後半までのベトナム略史と時代背景が丁寧に説明されています。

特にベトナム戦争とホーチミン体制の終了後、レ・ズアン体制へと移行したこと。そして、ホーチミン体制後はレ・ズアン体制へ、そしてチュオン・チンの代理体制へと次第に展開されること。このあたりが当時の世界情勢に触れられながら解説されています。

また、筆者のドイモイ史観(?)も合わせて紹介されています。筆者は「ドイモイ」は「下からのイニシアティブ」が作り上げた社会的雰囲気・実態(第1章)と、中央上層部共産党指導者のチュオン・チン(第2章で詳細)が中心となり、それを「ドイモイ」という政策に落とし込んで行った(第3章~第5章で詳細)とする立場をとります。

さらに、当時のソ連では「ぺレストロイカ」をゴルバチョフ大統領(当時)が推進し始めていました。この流れもベトナムの「ドイモイ」政策に影響を及ぼしたことを指摘しています(第5章で詳細)。ただ、この旧ソ連の影響はあくまでも補助的なものと解する立場を筆者はとります。当時のソ連政府からも承認を得ることで、既に本格化した「ドイモイ」の流れを、ソ連の圧力に対する危惧から来る不安感を払拭することが主目的であったと分析します。

2.「下からのイニシアティブ」としての地方の実験:

筆者が強調する「下からのイニシアティブ」として、先行する形で実施された地方の実験(1970年後半)をいくつか紹介しています。

【下からのイニシアティブの例】
南部ホーチミン市のコメ市場価格買付政策/華僑ネットワークを通じた日用品貿易
北部ハイフォン市の農業生産請負制
南部アンザン省のコメ市場価格買付政策
ロンアン省の日用品市場買付政策+賃金補填制度

特に、ロンアン省の日用品市場買付政策+賃金補填制度はその後のドイモイ推進にあたってモデル事業との位置づけがなされ、ベトナムのドイモイ導入にあたって重要な位置づけを担うことになったようです。

また、ここで興味深い点は、地方の取り組みが「実験」という用語を使用している点です。これは筆者が独自に用いている用語ではありません。当時の資料(翻訳)が、地方の取り組みを「実験」という記述で記録しているます。当時のベトナム共産党の地方幹部が地方の独自政策を実施する上で、「実験」という用語を使用し、中央政府が推進する「社会主義政策」と矛盾しない形で実施するための知恵を感じます。

3.共産党中央幹部の葛藤:チュオン・チン書記長代理と第6回共産党大会(1986年)

「ドイモイ」は1986年12月の第6回共産党大会で本格的に導入されました。その形成過程が第2章から第5章で記述されています。

「ドイモイ」の主導的役割を担ったチュオン・チン氏は当初むしろドイモイ政策の先進的事例となった「地方の実験」に対し懐疑的であったようです。そして、筆者の分析では当時の書記長レ・ズアン氏の方が容認派であった説いています。

一方、ロンアン省の実験を視察後に、「ドイモイ」の推進派筆頭格になります。この転換の遠因はハイフォン市の同視察依然からとなります。目の前で展開される成功事例を見ることで、社会主義の教義に反するが「容認」する姿勢へ転換していったようです。そして、ロンアン省の事例により確信に変わります。それ以来、のちの「ドイモイ」的なものを推進する理論的支柱となるべくブレーンを集め、本格的な「ドイモイ」推進運動に着手していきます。

ここで、興味深かった点はその推進論法・手法です。これまで推進してきた政策に誤りを認め、新たな方向性を打ち出すには大多数が反対派となります。そこで、筆者の分析によると、当時チュオン・チンが採用した論法が、「方針自体に間違いはなかったが、その運営方法が誤っていた」という論法でした。

具体的には、社会主義の発展段階には「初期段階」から始まり、最終段階の社会主義像までにはいくつかの段階がること。当時のベトナムはまだ「初期段階」であることから、資本主義的な意味合いも含めた「ドイモイ(刷新)」的発想を持って、社会主義の最終段階を目標に取り組まなければならないということ。そして、「ドイモイ」自体はレーニンのネップ(新経済政策)を推進するものであること、といった論法でした。

これが、チュオン・チンが政治的にこのような論法・手法をとったのか、本心からこのように考えていたのか、本書では分析をしていません。ただ、淡々と過去の文献から事実のみを追いかけています。

4.レーニン像が未だにそびえるわけ:

同書を読むと、「ドイモイ」をベトナムが社会主義後の新体制として導入したわけではないことがわかります。むしろ、社会主義を志向するにあたって、その初期段階としての資本主義的様相を「ドイモイ(刷新)」的発想で取り入れようとしていのだと思えます。

従い、未だにベトナムの正式国名は「Social Republic of Viet Nam(ベトナム社会主義共和国)」です。

ベトナムは決して過去に志向した社会主義を諦めたのではありません。そして、この志向は中央上層部が中心となり作り上げたものではなく、一般国民から始まったものです。だから、「ドイモイ(刷新)」が公式に認められた時、レーニン像を破壊するという行為がおきなかったのだと思います。

ただ、実際資本主義的なものが一旦導入されてしまった後、未だに社会主義を志向しているのか誰も知らないのかもしれません。

レーニン像が未だにそびえているのは社会主義に対する無関心から来るのかもしれません。


ところで、本書出版後に著者の古田教授と塩川教授による下記のようなやり取りがありました。
塩川教授の「読書ノート」にて同著作に対するコメントが掲載され、古田教授がそのコメントに回答するといった形式でのやり取りになっています。

ー塩川教授HP「読書ノート」

ー古田教授の回答


ドイモイの誕生―ベトナムにおける改革路線の形成過程 (シリーズ 民族を問う)
古田 元夫

ドイモイの誕生―ベトナムにおける改革路線の形成過程 (シリーズ 民族を問う)
物語 ヴェトナムの歴史―一億人国家のダイナミズム (中公新書) ヴェトナム新時代―「豊かさ」への模索 (岩波新書) ベトナムの国家機構 (明石ライブラリー) 若者よ、マルクスを読もう (20歳代の模索と情熱) タイ 中進国の模索 (岩波新書)
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30代 男
ベトナム在住。ベンチャー企業で働いてます。
将来はベトナムを中心としたASEAN諸国で何かしたいと思っています。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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